漁法紹介

漁法1 釣り漁

釣り漁
釣り漁業(ひき縄漁業)
昔から土佐湾では広く釣り漁が行われ、様々な釣り漁法が発達してきており、大きなマグロから小さなウルメイワシまで多種多様な魚種を対象としています。
釣りは資源にも優しいうえ、極力小さな魚の混獲を防ぐために、針のサイズを大きくしたり、一つの仕掛けに結ぶ針の本数を制限する、また漁獲上限や休漁日を設定する等して、漁業者自らが資源の保持に努めています。
代表的な釣り漁業としては、カツオ一本釣り漁業、疑似針を船でトローリングし、カツオやマルソウダ、マグロ類などを釣獲するひき縄漁業、一本の幹糸に複数の餌付きの針や毛針を付け、それを複数セット潮に乗せて流してゴマサバやハガツオ、チカメキントキなどを釣獲する立て縄漁、キンメダイの手釣り漁(エサ釣りや毛針釣り)や樽流し漁、アカムツの底延縄漁、ウルメイワシの毛針釣り漁などがあり、マルソウダやウルメイワシといった小さな魚を一匹一匹釣り上げる漁法が今も続いているのは、日本広しといえど、高知県の土佐湾だけです。

漁法2 土佐のカツオ一本釣り

一本釣り
一本釣り
土佐のカツオ一本釣り
土佐のカツオ一本釣りは、諸説ありますが、江戸時代の初期に紀州(今の和歌山県)から伝来したという説が有力です。紀州のカツオ漁師が、カツオの多い土佐湾や足摺岬周辺で漁をするために住み着き、県内全域に広まっていったものと考えられています。
漁法としては、カツオの群れを見つけ、活きたイワシなどの小魚をその群れに蒔き、併せて船の船首部分から海水を散水し、海面に水しぶきを立ててカツオを船に寄せます。カツオが船に付いたら、竿でテグス(糸)の先に付けた「カブラ」と呼ばれる小魚に似せた疑似針を投げ込み、あたかも小魚のように動かして、カツオを食いつかせます。この「カブラ」の針は、釣ったカツオがすぐに外れるように「かえし」が無く、次々にカツオを釣り上げることが出来ます。
土佐湾には、カツオやマグロ類が「漂流物の周りを回遊する」という習性を利用した「土佐黒潮牧場」という人工浮魚礁(ブイ)を15基設置しており、これらの魚種を集魚し、釣獲しています。この他にも、様々なシチュエーションでカツオ一本釣りは行われますが、特にクジラ付きのカツオを追いかけ釣獲する様は圧巻です。クジラが餌のイワシを探してくれるので、カツオはクジラが探したイワシのおこぼれを狙いますが、そのカツオを狙います。クジラと併走してのカツオ漁は大迫力です。

漁法3 定置網漁

定置網漁
定置網漁
土佐湾周辺で釣り漁業と双璧をなす漁法としてあるのが、定置網漁です。土佐湾の沿岸各所、岸から約2キロ程度までの範囲に大小多くの定置網が設置されています。定置網漁は歴史も古く、江戸時代には土佐湾沿岸に様々な形状の定置網が設置されていました。定置網も資源に配慮した持続可能な漁法の一つと言われています。
定置網は海中に網を設置し、網の奥に迷い込んだ魚を漁獲する漁法ですが、網の入り口は常に開放してあり、出口にもなるため、魚が最初に迷い込み泳ぎ回る「運動場」というエリアに入った魚のうち、約90%は再び網の外へ出てしまい、網の奥の「魚獲り」という部分で漁獲される魚は数パーセントから最大でも10%程度と言われています。
定置網で漁獲される魚種は多種多様で、沿岸に生息するマアジやマダイ、イサキといった一般的な魚種から、沖合に生息するのカジキやマグロ、マンボウや、南方系のハタ類やフエダイ類、シマアジ、ヒラスズキといった高級魚なども獲れます。高知県では特に3,4月に東北や北海道沿岸から南下してくるブリが漁獲されますが、このブリは日本海側の寒ブリにも負けないほど脂が乗っているものが多く、「春ブリ」として高知県内では親しまれています。

漁法4 まき網/底びき網/機船船びき網漁

土佐湾周辺では、釣りや定置網で漁獲(多獲)することが難しい魚種について、水域や魚種を限定するなどして、まき網や底びき網、機船船びき網漁などが行われています。

まき網漁

まき網漁
まき網漁
高知県西部に位置する宿毛湾から豊後水道の一部の区域において、アジ、サバ、イワシ類、キビナゴといった魚種を漁獲する、小型、中型まき網漁業が行われています。夜間、光を使って魚群を集め、それを取り囲むように網を投入し、網を絞って魚群を漁獲します。この漁法で漁獲される魚種の中でも、キビナゴは宿毛市の特産となっています。

底びき網

土佐湾において水深150m以浅では小型底びき網漁、150m以深では沖合底びき網漁が行われています。小型底びき網漁は、8~15メートルの長さの竹などを使って網口を広げる「ビームトロール」という漁法。
高知で「ひめいち」と呼ばれるヒメジやヒラメ、エソ類、ハモ、アジ、クマエビ(アカアシ)などが漁獲され、ヒメジを丸一匹を使った郷土料理「ひめいち寿司」の原料として重宝されています。沖合底びき網漁は「かけまわし」という漁法で、深海性のニギス(沖ウルメ)やアオメエソ(メヒカリ)、ハダカイワシ(ヤケド)、アカムツ(ノドグロ)が漁獲されます。

機船船びき網漁(パッチ網漁)

主にイワシシラス(マイワシ、ウルメイワシ、カタクチイワシの稚魚)を漁獲する漁法で、2隻の船で目の細かな網をゆっくりとひきます。漁獲区域は地区によって細かく定められています。イワシシラスは沿岸から沖合まで広大なエリアに広く分布しますが、パッチ網漁の許可区域は岸から数キロ圏内しか認められていないため、イワシ資源に対する影響は低いと考えられています。また、川の河口が漁場に含まれるエリアでは、12~3月に河口周辺の海で育つアユの稚魚の混獲を避けるために、河口から数百メートル沖までを禁漁区域とすることで、アユの稚魚を保護しています。
珍味とされるアナゴ類の稚魚「ノレソレ」も冬から春にかけて、この漁法で漁獲されます。

漁法5 火振り漁

火振り漁
四万十川上流淡水漁業協同組合の火振り漁の様子
昔ながらの伝統漁法として、松明で網にアユを追い込む漁法で、四万十川や仁淀川などで行われます。特に四万十川の火振り漁は、夏から初秋にかけての風物詩で、漁師が振る松明が闇に大きな火の塊となって舞い、川面を照らす情景には迫力があります。
操業は、アユが夜間に身体を休める流れの緩やかな淵を横切るように刺し網を仕掛け、完全に日が暮れてから、松明の明かりや時には竹竿で水面をたたきその音で、アユを驚かせながら網に追い込みます。現在では松明の代わりに強い照明を使うこともあります。自然の光量が少ない新月周りの闇夜や渇水で川の水が少ない時が火振り漁を行うに最適なタイミングとされています。