
与力水産の代表取締役、吉村典彦氏が魚に魅了されたのは、物心ついた頃からだそうです。生まれ育った奈良県で幼い頃から釣りを楽しみ、魚の生態を調べるなど、魚そのものが好きだったと懐かしそうに語ります。
転機となったのは大学受験でした。東北で畜産を学ぶか、高知で水産かという選択肢の中から、温暖な高知で好きな魚を学ぶ道を選びました。大学時代に高知の海や魚を学び、卒業後は周りと同じく商社へ就職。しかし、デスクワークで海や魚から遠ざかる毎日に耐えきれず、退社を決意します。


大学時代に学んだ高知の海に戻ることを決意した吉村氏が移住先に選んだのは、高知県宿毛市でした。
宿毛は、全国に生息する海産魚の約70%以上が生息していると言われる、日本でも稀有なエリアです。「世界に誇れる海だ」と、宿毛の海や魚について語る吉村氏の表情は少年のようです。恵まれた漁場には1000種類以上の魚種が生息し、日本で唯一全ての漁法で水揚げができるのが宿毛の海だと、嬉しそうに話します。

しかし、日本全体で水産業界が衰退している現状に危機感を覚え、起業を決意しました。魚の目利きを学ぶため、約2年間無給で仲買人のもとに弟子入り。その間、奥様が「夢を叶えて」と支え続けたそうです。「辛くはなかったですか? 辞めたくなったりしませんでしたか?」という問いに対し、吉村氏は「楽しかった!」と即答します。朝5時から一日中、仲介人のもとで勉強に励んだ日々。地域の文化や伝統、海の歴史だけでなく、地元の漁師さんや魚を取り扱う業者、飲食店の利益につながる学びは、自身の大きな夢を追いかける上で不可欠だったと振り返ります。

宿毛に移住後、地域に溶け込むため地元の行事に積極的に参加し、青年会議所などの活動にも尽力しました。地域や地元の人々に支えられ、支え合うことの重みを経験し、水産事業者や地域への想いが揺るぎない目標へと変わったと言います。漁師が獲ってきた魚を高値で競り落とし、仲介業者を通さずに自社で営業、加工、発送まで行うことで、飲食店へ安く販売することを実現。現在の専務取締役である有田氏と二人三脚で、現在まで会社を成長させてきました。


「与力水産」という社名は、文字通り「与える力」で宿毛、四国、そして日本の水産業界を盛り上げたいという想いが込められています。
かつて使用されていた納品書を見せていただくと、水揚げされた日時や処理方法、保存方法、魚ごとの加工・調理方法のアドバイスまでが丁寧に記載されていました。現在はデジタル化が進み、手書きの納品書は使われなくなりましたが、販売先に対し、小さなことにも丁寧すぎるほど真摯に向き合ってきた姿勢こそが、ホテルのシェフや飲食店からの厚い信頼につながっています。
専務の有田氏は、「いつも大風呂敷を広げるのが吉村で、私はその火消し役です。彼の想いを理解しているからこそ、時には喧嘩のようになってもNOと言うこともあります。ですが、これからも吉村と共に、皆さんに喜んでもらえる会社であり続けたいですね」と、二人の固い絆を感じさせる言葉を語ってくれました。



与力水産は、平成29年に経済産業大臣より地域未来牽引企業に選定されています。
吉村氏と有田氏が二人三脚で朝早くから深夜まで業務に邁進し、苦節16年。新型コロナウイルス感染症で大きな打撃を受けたものの、誰一人辞めることなく辛抱してくれた社員や、少量でも取引を続けてくれた飲食店事業者の皆様がいたからこそ、社名に恥じないよう、高知の魚と共に未来に継承できる水産業を残していきたいと、吉村氏は熱く語ってくれました。

与力水産株式会社
本社〒788-0262 高知県宿毛市小筑紫町小浦90番地26
TEL0880-67-1122
FAX0880-67-1121
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